月蝕夜の気泡
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私は黙って、その給仕に案内されて広やかなコルク張の階段を昇って行ったが、登って行くにつれて、階中に満ち満ちている高潮したレコードと舞踏のザワメキに気が付いた。 私は黙って夕食の箸を置いて新調のフロックと着換えた。誰しも疑わない姫草ユリ子の正体をここまで疑って来た妻のアタマを小く思いながら。 思えば子供の頃ころから弟を助けるのはいつも俺の役目だった。洋式便器の便座を下ろし忘れて座ってしまい、すっぽり墳はまって泣き叫さけぶ有利主人公を救出したのは、親父でもお袋ふくろでもなくこの俺だ。今頃きっと弟は、見知らぬ土地で心細さのあまり「おにーちゃん、おにーちゃん」と泣いているに違いない。関連項目:オナニーマスター黒沢