春城飛花
- 人気漫画
と思わず口を辷らしたが、恐らくそれが図星だったのであろう。樽の縄を始末していた彼女は、ただ赤面した切りでコソコソと病院に逃げ帰ったようであった。 彼女の郷里は青森県の酒造家で、裕福な家らしく聞いていたが、その後の彼女の朗らかな性格や、無邪気な態度を透して、そうした事実を私等は毛頭疑わなかった。 おれたちが彼女の七十年間を聞いている間にも、幾人いくにんかの神族が入ってきてはそこ此処ここに居場所を見つけて残っていった。いずれも服装は質素を過ぎて見窄みすぼらしく、この寒い土地にありながら裸足はだしに近いサンダル履ばきであったり、薄うすい上着だけで震ふるえていたりした。幸い地上に比べて地下は暖かく、この部屋には灯あかり代わりの火もある。夜の中を走るよりは快適ですう。関連項目:吾妻鏡