水曜日はきらきら星
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私は黙って夕食の箸を置いて新調のフロックと着換えた。誰しも疑わない姫草ユリ子の正体をここまで疑って来た妻のアタマを小く思いながら。 彼女と私とがコンナ風にシンミリとした憂鬱な調子で言葉を交した事はこの時が初めてだったように思う。何となく虫が知らせたとでも言おうか。それともこの時すでに、白鷹先生の事に関して、絶体絶命の破局にグングン追い詰められつつ在る事を自覚し過ぎるくらい、自覚していた彼女自身の内心の遣ない憂鬱さが、私の神経に感じたものかも知れないが。 彼女は小さな石室に我々を招き入れ、壁の油に松明たいまつの火を近付けた。途端とたんに六箇所へと炎が移り、部屋は昼間のように明るくなる。四方の壁は燃えるように真っ赤だ。関連項目:五月原課長のつぶやき