庚申待ち
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私の日記を翻して見ると、それはやはり十一月の三日、明治節の日であった。彼女が事を起すのは、いつも月末から初旬へかけた数日のうちで、殊に白鷹先生から電話がかかったり、手紙が来たりするのは大抵三日か四日頃にきまっているのであった。そこにこのの神秘さがあった事を神様以外の何人が察し得たであろう。 その九月も過ぎて、十月に入った二日の朝、彼女はまたも病院の廊下でプリンプリンと憤った態度をして私の前に立った。 心の中の言葉を読まれたのかと、思わず足が止まってしまった。けれどそれはおれの口から発せられたのではなく、ロミを見失わないように前を向いたままの相棒が、平素と変わらぬ口調で言ったのだ。関連項目:悪女の鑑