はっけよい
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桜木町から二円を奮発した私が、内幸町の丸の内倶楽部へタクシーを乗り付けたのが午後の八時半頃であったろうか。実は女風情の言う通りになるのがこの際、少々業ではあったが、自動車に乗り込むと同時に気が変って、狭苦しい迷宮じみた下六番町あたりの暗闇を自動車でマゴマゴするよりも、解り易い丸の内倶楽部へアッサリと乗付けたい気持になったからであった。 いつもの通り病院を仕舞った私は、雨上りの黄色い夕っていると、そのうちに黙って給仕をしていた妻の松子がフイッと大変な事を言い出した。「何年居ると思っているんだい? 坊ぼう・・・さっき陛下が図はからずも口にしたですう。七十年だよ。七十年も同じ国で過ごせば、此処で生まれた子供よりは物知りにもなるさ」関連項目:キラキラ100%