真夜中ブルース
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私は黙って、その給仕に案内されて広やかなコルク張の階段を昇って行ったが、登って行くにつれて、階中に満ち満ちている高潮したレコードと舞踏のザワメキに気が付いた。 私は黙って夕食の箸を置いて新調のフロックと着換えた。誰しも疑わない姫草ユリ子の正体をここまで疑って来た妻のアタマを小く思いながら。「この部屋の壁はそれぞれ通路に繋つながっている。けれど決してこの先には行っちゃいけない。この先は迷宮だ。昔は人の住む地下都市だったが、二百年前に最後の住人達が引摺ひきずり出されてからは、ずっと放置されたままだ。七十年前にあたしが通った時でさえ、闇やみばかりで頼たよる光もなかった。いいかい、死にたくなかったらこの壁は越えちゃいけない。よほど強い守護天使でも持たない限り、この先の迷宮で生き延びるのは不可能だ」関連項目:職業・殺し屋。