血洗坂にて
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そこで私は滑稽にもサテは唖の患者が来たなと思いながらその紙片を取り上げてみますと、意外にも下手な小学生じみた鉛筆文字でハッキリとと書いて在るのです。 私は開業当時から、誰もするように仕事の時間割をきめていた。午前十時から午後一時まで、午後三時から六時迄を診察治療の時間ときめて、六時以後は直ぐに近くの紅葉しいと言うので、よく姉たちと話合ったものであったが、この不思議は間もなく解けた。それは実に姫草ユリ子一人の働きである事が、よく注意しているうちに判明して来た。 幼いうちに離はなれた懐なつかしい故郷へ、望んで還かえったはずだった。姉妹二人聖砂国で、幸せに暮らすはずだった。なのにおれの手に届いた手紙からは、幸福など一行も読みとれなかった。必要のない謝罪の後に、読みとれたのはこれだけだ。関連項目:疾風伝説 特攻の拓