あかず夢のむこう
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私はそうした彼女の顔立をタッタ一目見た瞬間に、彼女の小鼻に隆鼻術をやって見たくなったのであった。これくらいのパラフィンをあそこに注射すれば、これくらいの鼻にはなる。彼女の小鼻は鼻骨と密着していない、きわめて手術のし易いタチの小鼻であると思った。こうした一種の職業意識から来た愚かな魅惑が、彼女を雇い入れる決心をした私の心理の底に動いていた事も否定出来ない事実であった。 けれどもその時の私等はそうした軽率さを微塵も感じなかった。彼女の容姿と言葉付の吸い寄せるようなあどけなさが、彼女の周囲を渦巻きめぐっているであろう幾多の現実的な危険さに対する私等のアラユル常識を喚る日、 石戸の脇わきに腕組みをした相棒が陣取じんどっていたので、訪おとずれる人達は皆みなぎょっとして数歩後退あとずさる。それでも襲おそい掛かかってきたりしないあたり、聖砂国の奴隷どれい階級の人々は、みな大人しい印象を受けた。船旅中にも思ったことだが、彼等には基本的に闘争心とうそうしんというものが欠けているのかもしれない。関連項目:R O D -READ OR DIE-