隠密道中大変記
- 人気漫画
相手は初めて口を開きました。シャガレた、底強い声でした。 と即答をしましたが、その刹にはソンナ気振も見せないようにして、平凡な開業医らしいトボケ方をしておりました。姫草ユリ子の行方を知っていないでよかった。知っていると言ったら直ぐに付け込まれて脅迫されるところであったろうと腹の中で思いながら。 両手の指を開いたままで、頬ほおの震ふるえそうな顔を覆おおった。小指に填はまった薄紅うすべに色の石が、冷たいままで目尻めじりに当たる。無性むしょうに腹が立ち、誰かを心の底から憎にくみたくなった。でもそう簡単には逃にげられない。関連項目:明日泥棒