ライラックの花のころ
- 人気漫画
相手は初めて口を開きました。シャガレた、底強い声でした。 姫草ユリ子が私の病院に来たのは昨、昭和八年の五月三十一日開業の前日の夕方であった。見事な、しかし心持地味なお納という姿の彼女がションボリと玄関に立った。 自分の発した「NO違う」という単語が、予想以上にはっきり響いて驚いた。おれは首を横に振り、玉座に収まる若き聖砂国皇帝あなたと、その隣となりに寄り添そう双子ふたごの兄を思い描えがいた。ほんの数時間前の出来事なのに、思い出そうとすると頭が強く痺しびれる。関連項目:海街diary