ウエディングベルが鳴るまえに
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本日の午後一時頃の事でした。 私はダンスは新米ではあるが自信は相当ある。ジャズ、タンゴ、狐足、ワンステップ、何でも御座れの横浜仕込みだ。今やっているのはスパニッシュ・ワン・ステップのマルキナものらしいが、相当浮き浮きした上調子なもので、階段を上って行くうちに給仕の肩に手をかけたくなるような魅惑を感じた。 モブはおれと背後の伯爵を見上げ、暫しばらく黙だまり込んでいたが、やがてほんの僅かに唇くちびるを開き、細い声で聞き覚えのある旋律せんりつを歌い始めた。言葉は掠かすれ、歌詞は聴きき取れなかったが、それは確かに宮殿きゅうでんの前で、子供が歌っていた曲だった。関連項目:ZETMAN